ルイス・カーンはウサギ「マイ・アーキテクト」
映画の中で、ルイスカーンのことを「うさぎ」といういう人がでてきます。おもちゃ屋の店先で太鼓をたたいてくるくる回るようなあの“ウサギ”です。私もなんだかルイスカーンは、“ウサギ”っぽい気がします。
それは、「不思議の国のアリス」に出てくる、“ウサギ”で、あの世とこの世、現世と異次元をつなぐ案内人が“ウサギ”の仕事だからです。そして、一体何を急ぐのか、時間に追われて忙しく動き回っている姿は、まさにアリスの“ウサギ”みたいな気がしました。
あと、この映画をみて思ったのは、「建築は、男の人にしかできない仕事(男性的な感性がないと出来ない仕事」で、きっと神様ってのも男だと確信しました。「無から有を生み出すこと」=そこに存在する根拠が、誰にもまだ明快ではないときに、そのものの存在する必要性を周りの人に納得させ、立証し、必要性が疑われる中、その軋轢を無視して創造し続ける無謀さは、神さまと男にしか出来ない愚行であり、偉業なんじゃないかと思う次第です。(すっごい男の人に怒られそうな発言ですが)
でも、最近の混雑する都市の隙間を埋めるように建設されるものは、女性的なやりくり上手な小さくまとまるようなバランスのいい感性がないとうまくいかない気もします。
映画を見た直後は、「女の性(サガ)がよく描けている映画だと思いました。
女って生き物の本質的なところが出ていて、いろんなパターンの女の人がこれでもかと、出てくると思いました。
たとえば、、本妻さん=「すでに愛されてもいない夫との法的関係と自分の社会的立場に固執する女。」
最初の愛人さん=「捨てられて、別れて30年以上たつのに、別かれたくなかった、別かれたのは辛かったと思い出していまだに泣く女」。
最後の愛人さん=「ルイス・カーンは私と結婚していっしょに暮らすつもりだった。と、今となっては、それが真実か確かめようもなく、実現することすらない、過去の愛された記憶にすがり、現実世界から逃避している女
」
この3人の女絵巻を客観視するもっとも身近な女秘書。
言いたい放題の親族の女性。愛した事実を肯定し、否定してはだめという親戚の女性。。
こういっちゃー、もとも、こものないですが、女性がもついろいろな側面が赤裸々に見えて勉強になりました。映画を見にきていた善良な建築学生さんは、そんなところはちっとも見ていないで、カーン建築に見ほれていたのではないかと思いますが。。
2人の姉の女性も、この映画をナサニエルという年の離れた父親をあまり知らない弟が撮影するから協力したんであって、どっちかの姉が映画を撮るといったら、どっちかの女は協力しなかったと思う。女なんて、そんな生き物じゃないかと思う。
出てくる女性は、みな知的な印象だけれど、やっぱ男ではない、と思いました。
「アメリカ吹奏楽団のための船」が傑作だと思いました。
この映画の音楽を評価する友人がたくさんいますが、私も第九が流れてきたのが印象的で耳に残っています。
あと誰もがすごいと思うのは、この山荘の別邸とバングラデシュの国会議事堂とこのソーク生物学研究所の空間だと思います。この空間をみて思い出したのが、沖縄海洋博の跡地の営沖縄記念公園の広場です。左右に開けた空間の向こうには、沖縄戦のとき、顔の半分を失ったような米軍の爆撃で島の左側が欠けてしまった島が見えます。
左の写真が沖縄海洋博跡地公園です。
この空間に立ったとき「なんで尊大な、傲慢な空間!」となんだか、不愉快な気になりました。
そして、ルイスカーンのソーク研究所をみて、ああ、建築家が若いときにこういうの見て、影響されるんだと思いました。神を感じようとまねっこするけど、感じていないんだもの、無理してはいけない。ただの為政者の傲慢な空間ってこういう背景で生まれるのかしらと思いました。何一つ、神様も自然も賛美していない、と思いました。
建築の人と仕事をすると軸線とかやたらこだわる人がいますし、空撮しないとわからないような軸線は混雑する都市空間で見つけ出しても自己満足な気もしますが、私には正解はわかりません。すべてが廃墟になってもの残るバングラデシュの国会議事堂のような建築なら、すべてが消えたときにその見えない軸線が目の前に開けてくるような気がしますけれど。
でも、
この沖縄の広場の空間をみて、「きれい」と叫んだ友人もいます。私の方が間違っているかもしれません。
隈研吾さんという人は、本当に世の一般人に建築という世界を普及するために細かい仕事をこつこつと引き受けて本当に偉い人だと思いました。神様と建築界から表彰されてもいいと思います。
さて、ながながくだらない文章も最後に。
レンガに“何になりたい?”“アーチになりたい”という。
とあるケーキ屋さんがタマゴに話しかける“何になりたい?”“カスタードになりたい”
“小麦と混ざってスポンジってのはどお?”というとやっぱり“カスタードになりたい”という。
ケーキやさんは、そのタマゴでシュークリームつくることにする。
尊敬するケーキやさんのケーキは、口にすると宇宙につれていってくれます。
素材を大切しに、創造するモノの中に宇宙を生み出す人はもっとたくさんいろんな分野にもいると思う。普通はアリスのウサギは捕まえられないのです。建築をやる人は、ほかの領域の芸術に興味がない人がいるけれど、身近に宇宙との扉があるという、その存在を知って欲しいと思いました。
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